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No.2

珈琲に映す月

珈琲に映す月
00:00 / 02:21

cv(敬称略)

店主:ばるう

​常連客:マキノ

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「やあ、いらっしゃい」
小さな喫茶店。
カウンター越しに居る店主は、気だるげな声に似合わず

とても優しい目をしている。
 

「ご注文は?」
「いつものやつで」

 

お客さんは私ひとり。
穏やかな空間の中、ただ店内から聞こえる音楽だけが

時間の流れを教えてくれる。

 

「今日はね、お客さんが二人も来たんだ。

でもね、ぼくを見て、びっくりして逃げちゃった」
「そりゃあ、驚くだろうね」

 

店主は小さく笑いながら、

相変わらずの不器用な手つきでカップにコーヒーを注ぐ。

 

「はい、どうぞ」
「ありがとう」

 

月を思わせるような金色に輝く瞳は、真っ直ぐに私を見つめている。
溢れそうなほどの期待を込めながら。

 

「ああ、そうだったね」
私は鞄から「代金」を取り出し、店主に手渡す。

「え~……またにぼしかぁ……」
「ねえ、次はもっといいものを持って来てよ。

そしたらさ、ぼくももっとすごいものを出してあげる」
 

尻尾を揺らしながら、悪戯っぽい笑顔を向けた。
このわがままな茶トラの猫店主を、やはり私は許してしまう。
きっと明日も、仕事帰りに寄るのだろう。
この不思議な場所へ。

ああ、今日もまた、夜が深くなる。

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